社食男女物語

私がうどんを食い終わって突っ伏して夢と現実の狭間をいったりきたりしていたときに、斜め向かいに座って本を読んでいた女に男が話しかけてました。逃げ出すタイミングを失ってしまったので聞いてました。盗み聞いてました。彼らは私が聞いてるとも知らずに何つーか「異性として見てるけどこれといって特に付き合うとかじゃない微妙な距離感」空気をバンバン出してて心が病みそうになりましたけど頑張って盗み聞いてました。きっかけは本です。一冊の本です。
男「本、けっこう読むの?どういうの読むの?」
女「うーん、そんなにたくさんは読んでないんだけど・・・。○○さんは?」
男「俺は最近ハードボイルド物にはまっててー」
女「えー!ハードボイルドですか?」
男「そうー『新宿鮫』っていうのがあってー10冊くらい出てるんだけど全部読んだもん」
女「え?新宿?鮫?」
男「新宿鮫って呼ばれている刑事がいてーすっごい渋くてかっこいいんだって!」
女「へー・・・」
男「本当に面白いんだって!あとはー最近伊坂幸太郎読んでるかなー」
女「あ!いいですよね、伊坂幸太郎。『重力ピエロ』読みました!」
男「いいよねあれー、春くんかっこいいよね」
女「ですよねー。あ、あと重松清っていう人の『流星ワゴン』ていうのがいいですよ!」
男「あ、あれ気になってたんだけど、まだ読んでないんだよねー。あれ表紙も可愛いよね」
女「タイトルもかわいいですよね!」
男「あと荻原浩って人の本も面白くてー」
女「荻原?」
男「ひろしってさんずいに告げるって字なんだけど、いいんだよねー」
女「へえー」
男「恋愛物とか読まないの?」
女「あー私、恋愛小説とかすごく苦手でー」
男「そうなんだー。俺、一時期すっごい恋愛小説ばっかり読んでてー、山本文緒とか」
女「あー」
男「でも今はハードボイルドで 笑」
女「ハードボイルドなんですね 笑」
ってところで私の中の信号が赤になったので爽やかに席を移動しました。空気が薄かった。ていうより男が嬉々として本の話をしてるのだけど、女が今ひとつあまり知らないっぽいっていう空気に。そのギャップに。新宿鮫も重力ピエロも荻原浩山本文緒も読んでる女がここにいますよ!!!て盗み聞きながら100回くらい叫んでました(流星ワゴンは未読なので至急読まないといけないみたいです)次の日に颯爽と社食で本を読んでたんですけど、まあ、何もなかったです。ですよねー。