あたしイチハ

あたし、これでも結構楽しい人生だと思ってるわけ。
そりゃあ、こんな体に生んだあいつを憎んでたよ。
でもブロンドの髪は気にいってるし、服だってそこそこ気をつかってるわけ。
ちょっと、他の女より力が強くて
ちょっと、他の女より体が丈夫で
ちょっと、他の女より飛べちゃうだけ。
ね。
あたしだって普通の女。


でも、生い立ちを理由にするつもりじゃないけど
やっぱあん時は荒れちゃってたわけ。
触れるものみな傷つけてた。
双子の弟があいつをぶっとばして晴れて自由の身になっても
もう行くとこまで行っちゃったっていうか
とにかく毎日死と隣り合わせだった。
まぁ、あたしは強いからそう簡単に死なないけど。


彼と会ったのも、そんな暗黒時代の真っ最中だった。
ていうか、敵だったんだよね。彼。
なのにあたしの強さにポカーンとしちゃってさ、
あんまりにも笑えるから冗談のつもりでほっぺに軽くキスしたら
気の毒なくらい真っ赤になっちゃってんの。
マジ笑える。
あたしを仕留めるチャンスだってあったのに
あたしの目の前でそのチャンスを踏み潰しちゃったんだよね。
でもさ、敵じゃん?
あたし、自分から追うタイプじゃないし
弱いんなら、それまでだし。
それも運命よねって思ってたわけ。


ていうか、あたし、自分のこと結構強いと思ってたけど
やっぱ上がいるわけ。
吸収とかされちゃってもう駄目だって、さすがに思った。
助かったんだけどね。
基本、タフだし。
つか、助けてもらっちゃって
何だか萎え萎えになっちゃったんだよね。
彼があたしん中の爆弾、取ってくれたけど
そん時はそれだけ。
でもさ、運命って予想できないもんじゃん?
彼との子どもまで出来ちゃったわけ。
恥ずかしいからどうしてこうなったのかなんて言わないけど。
武道会も盛り上がったしさ。
ちょっとミスって死んじゃったこともあったけど
まあ生き返ったし。
ハランバンジョーってやつ?
振り返ってみるとそんな感じ。
ね。
楽しそうでしょ。



あ、でも、強いて言うなら
もっと女らしい名前でも良かったかなって。
彼がちょっと呼びにくそうなんだよね。
「18号」って。