ぼくは勉強ができない、夏の名残りの薔薇

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)夏の名残りの薔薇 (文春文庫)

ある本日記で「子どもに読ませたい」という言葉にそそられて初山田詠美。なぜか勝手にあまり自分とは合わないイメージだったんだけど、むしろざくざくと読み進められた。この本に詰められてるスタンスに反発する人もいそうだなぁと思ったけど、私は概ね好感に思えました。勉強が出来ないことを卑屈に思ったり何で重要なのかわからないままがむしゃらに勉強するのよりは良いなと。でも残念ながらこの歳になって「もっと勉強しておけば良かった」と本気で後悔したりするので「勉強できなくてもいいじゃん」とはまったく思えない。サッカー好きで年上の彼女がいる勉強のできない主人公は、自分が勉強できないことを認識しつつもちゃんと悩むあたりが健全で眩しかった。ちゃんと悩んでいればよかったなとつくづく思わせる内容だった。

恩田陸が好きですいません。ここ最近読んだ恩田陸の文庫の中ではダントツで良かった。六章から成ってるのだけど、一章から五章はそれぞれ必ず誰かが何かの形で死んでいく。けれども次の章からは「死んだとされる人は何事もなかったように生存した状態で」その前後の出来事からはじまる。その意味は、ホテルに集うようになった理由とは、主催者の3姉妹の嘘と真実はどんなことか、とか、もうめくるめくドロリとしたものがぎゅうぎゅうに詰め込まれてていい。合間に挟まれる引用のところは正直私のつるつるな脳をごっちゃにするので飛ばしてたのだけど、それも合わせてこの舞台なんだろうなあ、と思いました。「読んだー!」ていう充実感もたっぷり。